【SF】華氏451度
華氏451度とは紙の発火点である
「華氏451度」まずこのシンプルなタイトルがカッコいい。
タイトルがかっこいいから読んだまである。
物語の始まりは、書物を焼く昇火士(ファイアマン)である主人公はある少女に出会うことで昇火士という仕事に疑問を持ち始め...
という流れで、全体としては焚書をテーマにしたディストピアSF。
個人的に海外SFは良い意味で無機質な描写が多いイメージがあったのだけれど、
ブラッドベリの筆致は非常に感傷的、情緒的で驚いた。
こういう文章は結構好きなのでブラッドベリの他の作品も読みたくなった。
ファイアマン=昇火士 という訳について
訳者あとがきで、ファイアマンをどう訳すかという内容がある。
この内容について要約すると、今までファイアマンという英語に焚書官という語が当てられていたらしいが、
訳者は本を燃やすことが肯定的な世界では言葉の響きも明るくすべきとして、
暗いイメージのある焚書は避け、昇火という語を作ったということ。
ここに訳者のこだわりと翻訳に対する情熱が感じられた。
ブラッドベリの焚書に対する危機意識が感じられる本書からの抜粋
個人的に印象深かったセリフを挙げていく。
主人公モンターグの上司であるベイティーのセリフ
「要約、概要、短縮、抄録、省略だ。政治だって?新聞記事は短い見出しの下に文章がたった2つ!しまいには何もかも空中分解だ。出版社、中間業者、放送局の汲み取る力にキリキリ舞いするうち、あらゆる余計な込み入った考えは遠心分離機で弾き飛ばされてしまう!」
もう1つ、モンターグがファイアマンとは?と聞いた時のベイティーのセリフ
「世界中で古臭いファイアマン(消防士)は必要なくなった。彼らは新しい職にありついた。我々の劣等意識が凝集するその核心部を守る人間。心の平安の保証人、公認の検閲官兼裁判官兼執行官になったのだ。それがお前だモンターグ、それが俺なんだ。 」