ファスト&スロー (上)

 

ファスト&スロー (上)

ファスト&スロー (上)

 

 

概要

ファスト&スローは五部構成であり、上巻では3部の途中まで掲載されている。

上巻ではまず、物事を自動的に判断するシステム1(無意識に似ていると感じた。)、

集中力と注意力を要するシステム2という独特の用語の定義をする。

そして我々の判断がいかにシステム1という自分で律せないものに依拠しているのか、

ということを様々な実験で暴き、人間はなぜ統計的思考をするのが困難なのかということを論ずる。

 

感想

この本を読んでいるとき、驚きの連続だった。

確かに我々は、意思決定に幾ばくかの感情を持ち込んだり、

多少は論理的ではない過程を経るものだとは経験上わかってはいた。

しかし、本書を読むと我々人間はほとんど自分を律しているとは言えないのではないだ

ろうかとさえ思うほどの気持ちになる。(なんとなく構造主義に近い?)

とはいえ、この実験が本当に信頼できるのか、似たようなことをしても実験方法によって結果は大きく変わりそうだなとは思った。

 

印象的だった実験2つ

1つ目は、被験者にバスケの動画を見せて、片方のチームのパスの回数を数えろと指示する。

の動画の途中にゴリラの着ぐるみを着た女性がコートを横切り9秒間胸をたたくなどして立ち去るが、

被験者の約半数はこの以上にに気づかなかったという結果になった。

このことから分かるのは、我々は1つのことに集中していると他のことに対する注意力が落ちるということ。

 

つ目はイスラエルで行われた仮釈放判定人の実験。

彼らは仮釈放申請書を審査するが、食事休憩後の経過時間と申請の許可件数の比率を算出したところ、

休憩後の許可率が最も高くなった。

実験チームはこの結果の最も妥当な説明は、疲れて空腹になった判定人は、

深く考えるのをやめて却下するようになるという説明である。

もしこれが本当ならば、仮釈放という割と重要な判断にもかかわらず、

疲れて消耗しているからということで厳正に判断できなくなってしまうという

驚きの結果である。